IPAX2009 パネルディスカッション クラウド、グリーンIT、Webプラットフォーム・・・最新IT技術は未来を切り開くか?

「クラウド、グリーンIT、Webプラットフォーム・・・最新IT技術は未来を切り開くか?」を聴講してきました。当日、tsuda っていたので、自分用のメモがなく、発表資料が公開されたら感想を書こうと思いつつ約2ヶ月が経過してしまいました。

このパネルディスカッションは秀逸でした。
エンジニアの未来サミットとは大違い。あとで感想書く。

私の感想

首藤さんが発表資料「個人ネットワークの時代へ」を公開されているのを発見したので、この機会に書きます。

私がエンジニアの未来サミット 0905 エンジニア・サバイバルとは大違いと思った最大の理由が発表資料というパネルがあるという事です。id:kyagi さんがファシリテーター研修を受講してきたときによく言っていた言葉です。

議論を空中戦から地上戦に持ち込む

ここで言う「空中戦」とは言葉のやり取りで、「地上戦」とは図形や文章を書いて表現するということです。口頭で議論していても、実際のところ、お互いよく分かっていないし、議論が噛み合っているかどうかも懐疑的なものです。エンジニアの未来サミットは空中戦の議論で、本パネルディスカッションは地上戦の議論でした。

地上戦だと、パネルに書いてある、そこの、この内容についてパネラーの見解やスタンスが把握し易くて、聞いていて分かり易いです。おそらくはパネラー自身もその方が発言し易いと思います。

ついでに言うと、発表資料を丁寧に作らない発表者は損をしていると私は思います。資料なんかなくても喋りが上手いから大丈夫だと思っている発表者は、自己満足と分かる人にだけしか伝わっていないケースが多いと私は思います。よく分からなかったけど面白かったねでお終いです。

閑話休題。首藤さんの発表資料をベースに感想を書きます。


私はその仕事は本当に価値があるのかということをよく考えます。サラリーマンは毎月給料をもらえるので気楽ですが、フリーな人や自営業の方はもっと切実に考えていると思います。毎月もらっている給料分の価値を自分が提供できているかを考える機会は重要です。

自身の技術力の相対評価、他との差別化、会社に対する貢献、そして社会貢献へと何らかの客観的な数字(年収/売上/コミュニティへのメール投稿数/OSS へのパッチ投稿数/サポートのトラブル解決数/顧客満足度などなど)で評価すべきだと私は思います。ここで、実社会においては、信用や実績という客観的に評価し辛い指標もあります。所謂、大企業に所属しているから安心というものです。


この現行の経済システムに載らない貢献が増えてきたというのが面白いです。新たなビジネスモデルの到来を予期させます。梅田望夫さんの「オープンソースは無償」等のオープンソースに関する表現がよく誤解されるので、あえて言いますが、

オープンソースエンジニアも霞を食って生きているわけではない

ということです。自身(と家族)の生活を維持した状態でないと、オープンソースに関する活動をする余裕なんかありません。現行(今後?)の経済システムに載る形で収入を得た上で、オープンソースに関する活動を私はしているし、そうすべきだと私は思います。そして、オープンソースというソースコードを公開する事と、お金をもらう事は全く別問題です。オープンソースのプロダクトを提供して有償サービスを行っても何の問題もないし、クローズドソースな商用ソフトより高い対価をもらっても良いです。RedhatUbuntuMozilla 財団のようなモデルケースも既にありますし、いずれも組織を維持するための収入源があります。


これも嬉しいニュースだと私は思います。大企業に所属しなくても、大きな仕事や最先端の技術に触れるチャンスがどんどん増えてきました。クラウドの最大のメリットは、個人が empower される点に尽きると私も思います。逆に言えば、PC 購入とインターネットの接続費用を払えることが必須条件になります。


「一人会社」が何十億も出現するのではないかと首藤さんが述べたときに、田中さんが「無理でしょう」と一笑に付したのが印象的でした。本当にそんな未来が訪れるかどうかは分かりませんが、そんな世界をイメージできるか否かの明暗が分かれた瞬間だったと私は感じました。私は「そうなると面白いな」と普通に思ったのですが、その普通な感覚が未来への展望になり、自身の行動にも影響を与えていくような気がします。


self-motivate できることが重要な才能とあります。私の友人は大企業に所属している人が多いですが、入社して5年経て、今携わっているお仕事を楽しそうに話す人は少なくなりました。もっと言うと、お仕事のお話はあまりしません。もしかしたら、企業秘密で話せないのかもしれませんし、お仕事がつまらないのかもしれません。

self-motivate は、才能ではなく、主に環境だと私は思います。同じ思想や理念、技術力を持った仲間が周りにいるかどうかが大きな要素だと私は思います。コミュニティ活動や勉強会が流行っているのがその証拠です。人は他人を変えることはできないので、分からない人は(本人が変わろうとしない限り)ずっと分からないと、最近、私は諦めるようになってきました。若い頃は、環境を変えることに尽力するのも良いですが、年功序列の旧い体質や大企業の論理を変革するのは、多大な時間と労力と覚悟が必要です。私はそれを諦めて転職という道を選んだのですが、自分が成長できる環境や状況を作っていくのが人生において重要だと私は思います。

以下が tsuda ってた内容になります。ご参考まで。

参加者は200〜300人といったところかな

参加者は30代、40代が多いみたい。

blog を書いている人は5%ぐらい。よしおかさん、このネタばっかり。

OSS、IT 技術をとりまく環境をみて、個人とネットワークの時代、
イノベーション云々が本パネルディスカッションのテーマ

NTT データ田中さん、NTT 入社で、オフィスシステム、人工知能、
テキスト要約、Web 検索に従事。NTT データ移籍後、OSS に従事。

TERASQLINA, Luida, PostgresForest, TOMOYO Linux など、
NTT データもやる事やってるわね。

あっ、Hinemos 抜けた。

オンデマンド・スケーラビリティの追求がクラウドの背景。
グローバルなデリバリ、透過性レベルがメリット。問題点は
クラウドプラバイだによる囲い込み(ユーザ、データ、開発者)。
課題は信頼性。

NTT データとしては、OSSクラウドを構築したい。
中身が見えないのが気持ち悪い。

クラウドプロバイダによる囲い込みで開発者をあげているのはおもしろい。
米国の会社に囲い込まれている感がある。

メインフレームの時代 -> WS/PC の時代 -> Web の時代。
垂直統合ビジネスから、グローバルな水平分散、そして新たな統合へ。

Japan as No.1 時代。IBM さんを窮地に追い込んだ時代もあった。
当時の米国は、ベンチャー、特許ビジネスに力を入れて
逆転されてしまった。

今が時代の変曲点。米国に対して巻き返すチャンスでもある。

米国でさえ、IT 業界に興味を示す学生が少なくなった。特に基盤系。
IT を見直す時期がきている。

よしおかさん、きたー。

80年代は日本が調子にのっていた時期。90年代は米国が、
真面目に地道に分析して、集中的な投資をしていた。

垂直統合 -> 水平分散 -> 仮想統合の変革。クラウドは
データセンタだけではなく、端末側も含む。携帯性の高い端末も重要。

NTT データ田中さんの、ビジネス分野から見た技術の変遷や分析は
興味深い。OSS の世界にいないのはこういう人。

まぁ、勉強会でこんな話をされても
あんまり面白くないと思うけど、、、(^ ^;;

ギルダーの法則、ネットワークの通信速度は6〜9ヶ月で2倍になる。

メトカーフの法則、ネットワークの価値はユーザ数の2乗に比例。

OSS 開発にはオープンイノベーションによる協調が必要。
競争力のあるモジュール群、コミュニティ・ユーザを巻き込んだ、
オープンな擦り合わせ。

よしおかさん、難しいのは、OSS プロジェクトの中に
入り込む方法論を誰も教えてくれない。
会社も上司も経験則がない。それが課題。

首藤さん、経済貢献にのらない現象が増えてきた。
それをどうドライブするのか、興味を持っている。

オープンイノベーションの場を国が設ける。
巨大な IT の実験システムを作る。

よしおかさん、国がそれを作るというのががっかり感。
ここだけは納得できない。

ここからは、首藤さんのプレゼンを開始。

首藤さんは、技術者・研究者。Java JIT コンパイラ作ってた、
Binary Hack 書いてた、ベンチャーで実験していた。

産創研で働いていて、自分の年収は税金でもらっていて、
ペイしているかどうか、ずっと疑問だった。

会社がお金をくれているから良いという思考停止は今後リスク高。
会社が倒産すると崩れてしまう。

「今、仕事、忙しい?」と家内に聞かれて返答に困った。
研究は仕事なのかどうか迷った。
収入に裏付けられた作業ではないものは何なのか。

社会貢献の概念。会社を通して、仕事を通して行うのが
分かり易いパスだった。個人の余暇は?

「食べる」=経済システムに載る形で貢献する

懇親会のテーブルにて、4人中3人が「フリーです」
「フリーです」「個人でやってます」

ただ、まだまだ大組織にいた方がおいしいのは事実。
新卒は大組織に入るのがおいしい。福利厚生、住宅ローン、幹部候補。

その大組織自体に未来があるかどうかは別問題。

中途採用者は function、幹部にはならない。

個人が empower されている。PC 数万円、ネット接続は数千円/月。
個人が世界を変えられる。

但し、個人が産業・経済に載れるかどうかは別問題。

大企業こそ、自問を始めている。
NEC でも優秀な社員を囲っておくのは不可能だと考えている。

プロジェクトからプロジェクトへ自由に飛び回る
「一人会社」が何十億も出現。

個人とそのネットワークの時代です。
self-motivate できることが重要な才能。
やる気がある人はチャンスが大きい。

田中さんのコメント。一人会社は無理でしょう。

14年後に日本の GDP は半減する危惧されている。
公共システムですら、パフォーマンスが求められない。

電車に乗る人がいない、電気を使う人がいない。
そうなると、公共系に属するメリットが少なくなっていく。

NTT データは個人が持っている力を empower する方法論を
持っているのか?

田中さんのコメント。個人で技術だけあっても無理。
それをビジネスとしてどうコラボさせるかが難しい。
まとめあげる場を国や企業が用意する。

よしおかさん、オレも喋らせてくれ。

よしおかさん、むかし話を語り始めた。15分ぐらいか。

自社の技術にこだわればこだわるほど、イノベーションのジレンマに陥る。

ネットブックが売れているのは安いからだと思っている人は、
正にそのジレンマに陥っている。

ネットブックは安いから売れているだけじゃない。
DEC はそれで Sun を相手にしていなかったら倒産した。

技術者にとっての OSS。共通基盤、コミュニティによる
ベストプラクティスの共有、技術は会社のものではなく、社会のもの。

IHE(Innovation Happens Elsewhere) の時代。
自社のイノベーションを取り込みつつも囲い込まない。
技術者にとってチャンス。日本にとってチャンス。

シリコンバレーに行かなくて良い。東京で出来る。島根で出来る。
福岡で出来る。

首藤さんのコメント。自分の見解とほぼ一致している。

田中さんのコメント。その通りだとは思う。最終的にどうなるのか、
そのために社会の仕組みを変えて行く、活動していく。

「個人が社会に貢献する意義が分かり易いとやりがいになる。」
というアンケート回答を送信した。

首藤さん。会社がどうやって食っていくのかは、
別の問題として考えるべき。会社のために貢献ではなく、
社会に貢献することを考えた方が良い。

田中さん。社会と会社の貢献を両立させる仕組みを会社が
用意する必要がある。

吉岡さん。若い人に基盤技術を開発してほしい。
そういう場所を大人が用意する。
日本がそういう社会、国になっていってほしい。

よしおかさん、勉強会の価値をもっと理解してほしい。
ぜひ参加してほしい。