いざ物流センター

KLab×はてな エンジニア応援ブログコンテスト

SIer 時代の思い出シリーズ3部作の最後のブログです*1 *2

最後は「物流センター」にまつわるお話です。流通業における物流センターとは2種類のタイプに区分されます*3

  • DC (Distribution Center)
  • TC (Transfer Center)

簡潔に説明すると、DC とは在庫を持つ物流センターで TC は在庫を持たずに仕分けを行う物流センターです。本プロジェクトの要件の範囲内には DC の業務システムも含まれていました。当社は流通業のチェーンオペレーションシステムの実績とノウハウは持っていましたが、DC のシステムを開発したことがなく、全くノウハウがない中で開発が進められました。新基幹システムのサービスインの初日、私はその DC へ立ち会いに行くことになっていました。

旧システムの仕様書に基づき、見た目は同じような DC のシステムを開発しましたが、本当に大丈夫かという大きな不安をプロジェクトメンバーみんなが持っていました。開発リーダーから

何が起こっても当社は言われた通りに開発したと言え。

と私は指示を受けていました。若いエンジニアは覚えておくと良いと思います。こんな指示は現場へ行ったら当然無視です。

DC の朝は在庫としてストックしている商品を店舗へ出荷する業務から始まりました。センター内のあちこちの棚にある商品を1箇所(PC の前)に集めてきて業務システムを使いながら店舗別に仕分けていきます。先ずこの新出荷システムが全く使い物にならず運用することができませんでした。さらに DC にはセンターにストックする商品の発注と仕入処理、各店舗から送られてきた返品商品をまとめて取引先へ送る返品処理、センター内在庫を確認する棚卸処理、半期に1回の廃棄処理、そして店舗へ仕分けた商品を出荷する処理と一連の機能を要するシステムが求められます。扱う商品が大量になるため、本部や店舗用の業務システムとは異なり、運用を全く考慮せず(知らず)に開発された DC の業務システムは全く機能しませんでした。

とにかく実際の運用を知らなければ新システムの何がどうダメなのかが分からないので、その日は1日中センター内を走り回って、現場の担当者がどのように運用しているのかを見聞きしながら教えてもらいました。帰り際、センター長から言われます。

今週1週間はまぁええわ。来週の月曜日までに出荷処理のシステムだけでも直してや。

経験の浅い私でも不可能だと分かりました。

会社に帰って状況を報告します。

それしか答えようがありませんでした。会社に戻り、十数項目の改修内容を報告したのを今でも覚えています。当社が現場の運用を無視して開発したのも事実ではありましたが、設計から開発までその内容を了承していた顧客の情シス部長にも当然、責任はあります。後で分かったことですが、顧客の関係者を含め誰も DC の旧システムも実運用も知らなかったわけです。

犯人探しはともかく、DC の運用は多くの商品(お金)が動くので、このトラブルを放置すると顧客の業績に大きな影響を与えます。選択肢は運用がまわるように改修するしかなく、、、この思い出シリーズの空気を読めば分かるように一番下っ端だった私が DC の業務システムの再設計、並びに画面の UI 改善を担当することになりました。DC の現場の担当者はとにかく従来の運用にこだわる傾向があり、同じ機能があるかどうかではなく、同じ操作ができるかが重要でした。そのため、画面の UI は現場に直接行ってやり取りできる私しか直しようがなかったというのもあります。

センター長とこんなやり取りをよくしました。先ずは改修した新システムを私が一通り説明します。

新システムではこの運用を、こうやって、ああやって、処理することができます。

従来の運用と違うとすぐに突っ込みが入ります。

あー、もう全然違う。そんなのあかんわ、無理無理。

このぐらいではへこたれません。

従来はどうやって運用していたのですか?

すると、従来の運用をセンター長が説明してくれます。

こうやって、ああやって、、、

機をみて逆突っ込みを入れます。

それは新システムではこうやれば出来るんですよ。

センター長も興味を示し始めます。

こうやれば、、、出来るのか、、、

ちょっと間をあけます。何か適当に違う話題で雑談します。

じゃあ、そろそろ私は帰ります。

センター長も何だかんだと文句を言っても運用をまわさないといけないので、

ちょっと待って。最後にもう一回、操作方法を確認させて。

こんな感じで何とか使ってもらいながら、どうしても運用の使い勝手が悪ければ改修するということを繰り返しました。本当の意味で機能に大差がなければ、慣れれば運用はあまり気にならないものです。次回訪問したときに使い勝手を聞いて、そのままで良いと言われることもありました。

2週間で出荷処理が運用できるように緊急の間に合わせ改修をして、3ヶ月で運用にあわせた返品処理へ作り直し、半年かかって旧システムで行っていたのと同様に運用できるようになりました。何度も物流センターへ出向き、何度もトラブルが起こり、何度も障害報告書を書きました。この期間中は DC のセンター長から頻繁に電話が掛ってきて、本当に電話にでるのが怖かった時期でもありました。

今になって思い返せば、よくやったなと自分でも思います(^ ^;;
SI はコストや納期が厳しかったり、理不尽な状況もあると思います。それでもどうせ作るんだったら使い勝手の良いものを作りたいですね。